エコの一言
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2006年 05月 30日
エイフェックス・ツインの『カム・トゥ・ダディ』(エイリアンのモンスター、リチャード D. ジェームスの顔をした小人が大暴れする)、スクエアプッシャーの『カム・オン・マイ・セレクター』(未来的な精神病棟、犬が看守と脳を交換する)やビョークの『オール・イズ・フル・オブ・ラヴ』(汚れのない、白黒のビョークのロボットがセックスをする)などの、彼のアイロニカルで頭のイカレた、精密なミュージックビデオから、クリス・カニンガムを正気でない、狂った奴だと思い込むのは、道理にかなったことだろう。
しかし、そうでもないのだ!いや、全くそうではないのだ。 蓋を開けてみると、彼はウィットに富み、感じが良く、自分を卑下する、物静かな英国紳士なのである。そして彼がホワイトストライプスを大好きだということは言っただろうか!? その異端の映像作家は、最近、地下に囚われた巨大な頭で突然変異体の低脳者を描いた、ラバージョニーという6分間の短編映画のリリースでもって、非公式で創造的なブランクから帰ってきた。 再びエイフェックス・ツインが音楽を手がけたそのクリップ(と付録のグロテスクな身体の形でいっぱいの写真/スケッチ集)はカニンガムの奇妙な世界観と合致していて、全編通して、タイトルにあるキャラクター(それは―嫌々ながら、というように見えるが―監督自身が演じている)の暗視映像が高速に編集された移り変わる幻影で満たされている。 私はジョニーのこと、ビデオのこと、キューブリックとの仕事のこと、そして、次の映像作品という御馳走を待つファンが空腹でよだれを垂らすに至っている、彼のアクティビティの欠乏についてカニンガムと話す為に、彼の英国の自宅に電話をした。「また忙しくなるような気がしてるよ」と彼は言う。大勢のファンが喜ぶだろう。 *ラバージョニーのプロジェクトはどのようにして持ち上がったんですか? いくつか進められていた映画のプロジェクトの間の空いた時間に、いじったり撮影をしたりしてたんだ。僕はいつも何かを延々いじくって遊んでるから。そしたら、いつのまにかほとんどビデオとして完成してた。 やがてそれを完成させたら、Warpが発売したがったんだけど、僕はそれが単品で発売するのに値するかどうか自信がなかった。だから本を作ったんだけど、結局本のほうに夢中になっちゃって。本が、売り出すことの決め手になったと思う。 *映像はコミカル以外の何物でもなかったと思います、車椅子に乗った頭のデカイ男が、馬鹿みたいに長い一筋のコカインを吸い込んでクレイジーなダンスをするとか…。一番初めのアイディアというのは何によってもたらされるんですか? 音楽を聴いてその奥底まで入っていって、(その曲に)創造すべき世界を生み出させるんだ。あの曲(『ドラックス』のAfx 237 v.7)は大好きだよ。一定のレベルのヒステリーみたいな感じがして、それを形にしたいと思ったんだ。 *編集はかなり高速でもはやアニメーションのようですけど、完成させるまでは長ったらしくて退屈だったりしなかったんですか? やってるときは、時々それが永遠に続くみたいな気がして、かなり退屈に思えたりした。僕はすごく辛抱強いし、いつも出来る限り何かを完成できるように試みるんだけど、これは技術的に時間をかなり要するって思ったときは諦めようと思ったよ。 *アイディアを思いついてもそれを実現するのに問題が生じたりすることはあるんですか? いつもだよ。完全に実現できることなんて稀だよ。僕のビデオは、程度こそ違うけど、みんな僕の頭の中にあったものの近似だよ。 *これは編集をするのにどれぐらいかかったんですか? 多分6ヶ月ぐらいかな。少し断念したんだよ、編集したものがもう3分半残ってたから。6ヶ月のうちの3ヶ月は最終的に使わなかった部分の編集に費やしてて。それにポスプロのエフェクトを加えるとなると、またかなり時間がかかるから、「ああ、クソ」って思ってボツにした。半分カットにして、ああいった形で発売したんだ。 *カットされた部分はどんな内容だったんですか? あのキャラクターの女の子バージョンがいて、(ジョニーと)夜の屋外で高速で遊んでるっていう。前半より相当異様だったよ。 あれは事実上お金と関係なく作ったから、みんな暇なときにしか完成を手伝ってくれなかった。多分更にもう1年だらだら長引くことになりそうで、僕はというととにかく映画のほうにとりかかりたかったんだ。 *何人の人が限られた時間の中でその撮影を手伝ってくれたんですか? 3、4人。親しい友達だけ。 *撮影は楽しかったですか? ノー(笑)。最悪だったよ、僕が車椅子に乗ってたんだけど、自分がカメラの前にいながら監督をするのはかなり難しかったよ。 *誰か友達を車椅子に、と思わなかったんですか? うん、普通の状況だったら、誰か友達に無理矢理やらせただろうけど、みんなフルタイムの仕事に就いてるからそれができなかったんだ。 *頭のパーツを身につけるのはどんな感じでしたか? 酷かった。ゴムの頭のパーツを糊付けするのに1時間はかかったし、車椅子に乗るのも大変で。 *自己拷問みたいですね。 まさにそうだったよ。ボツにした部分は全部、ロンドンで、冬の夜、屋外で撮影されたんだ。4晩も裸で外に出なくちゃならなくて、死にかけたよ。なのに結局それは全部ボツにしてさ。無意味な拷問だった。 *リチャードは映像についてどう思ったんでしょう? 気に入ったと思うよ、多分。 *『カム・トゥ・ダディ』のヴィデオ以前は彼のことを知ってたんですか? いや、一度会ったことがあったけど全然知らなかった。僕らはだいぶ違うタイプの人間だけど、共通するところもたくさんあるんだ。 *彼の音楽のどんなところがあなたの頭の中で引き金になったんですか? もしも自分が音楽を作るとしたら、こういうのを作るだろうっていうのに一番近いんだ。 理想的には、自分が完璧だと思う音楽で仕事がしたい。僕のスタイルが音楽とすごくシンクロしたものだし、そのトーンが音楽に左右されるから、例えば実験的で先をいってるような感じのことをやりたいときは、同じような感覚を持った音楽が必要になる……リチャードの可憐な曲で僕は彼の音楽ファンになったんだ。結局風変わりな曲のビデオばかり作ることになったけど、僕は彼のアンビエントな曲のほうがより好きなんだ。 *『カム・トゥ・ダディ』がこんなに有名になると思ってましたか? ノー。 数日前にイタリアでエイフェックスとショウをやったんだ、今までやった作品を一緒にして新しいミックスにしたり、いくつか新しいビデオも作って。僕は最後に『カム・トゥ・ダディ』をプレイしたんだけど、それまでもう何年もそのビデオを観てなくて。観てたら一瞬自分が作ったものじゃないみたいな感じがしたよ。 作ってたときはあんなにうまくいくとは思わなかったな。わかんないものだよ、それが映像作りの本質なんだけど、事がどう運ぶかっていうのをいくら計画したり計算したりしても、(結果的にどうなるかは)かなり運にかかってるんだ。 *『カム・トゥ・ダディ』のビデオのお婆さんは、自分が何をしてるのか理解してたと思いますか? ノー(笑)。キャスティングのとき彼女をかなりびびらせちゃったけど、それでも顔面に送風機をあてられるなんて思いもしなかっただろうね。 *じゃあ彼女はいい笑いの種だったんですね。 お腹が痛くなるぐらい笑わされたよ。彼女のシーンを撮影してるとき別のところを見てなくちゃならなかったよ。送風機で風をあてられてるところとかかなり笑いまくってたから。 *ディレクターズ・レーベルのDVDを観ると、あなたの作品の2つのテーマが解剖学とロボット工学であることは明らかですが、元々は何がそういったものに対する興味をそそったんでしょうか。 僕の一番古い記憶のうちの一つが、『バイオニック・マン(邦題:600万ドルの男)』のある回を見てたことで、ロボットみたいな女の人が出てたんだけど―確かそのとき6歳ぐらいだったはずだ―「女の人のロボットだなんて、今までの人生で見てきたものの中で一番素晴らしいものだ」って思ったことを覚えてるよ(笑)。 *キューブリックの大ファンとしてこれは聞いておかなくてはならないんですが、彼とA.Iの企画で一緒に仕事をしたときはどんな感じでした? 23歳のときに彼と一緒に仕事をし始めたんだけど、びびったりはしなかったよ。 その頃は、自分自身の作品のプランにかなり取り憑かれてた頃だったし、あと精神的にかなり参ってた。僕は彼のファンではあるけど、キュ−ブリック狂ってことはないんだ。初めて『シャイニング』と『時計仕掛けのオレンジ』を観たのは18、19のときだし、子供の頃に彼の映画で観たのは2001(年宇宙の旅)だけだったからね。 *彼はどんな人でしたか? 普通。伝えられることで興味深いことは何一つない。彼の周辺によって作り上げられた変な伝説みたいなものがあるけど、ただ普通の人間だったよ。 *スピルバーグの『A.I』はどう思いましたか? 僕の好みではなかった。最初の1/3はここ20年のSF素材の中では一番素晴らしいものだと思う。映画の全編を通して、そうあるべきだったんだけど。けどまぁ、僕に何がわかる?スティーブン・スピルバーグだよ、そうだろ?スピルバーグを酷評なんてできないよ(笑)。 もしも僕があれの脚本を渡されたとしたら、絶対に最後の2/3をカットして全部あの家の中でやるね。もっとチープなものになるだろうけど。 *もしもあれを監督してくれと言われてたら、やりましたか? いや。今までもかなり大きな企画のオファーがあったけど、もしも(A.Iの)オファーがあったら葛藤したと思うよ。今自分自身のアイデンティティーを確立しようとあがいているところなのと、あとまだ新人の映画監督でいくつかのビデオしか作ったことがないから。—(それまでは)自分が何を始めようとしているのか模索していただけだった。自分の潜在意識を理解するためにね。 何かやるたびに、それがもっと自分の作品だって認識されるようなものであってほしいって思ってるんだ。映画をやるまでには、自分の映画がデイヴィッド・リンチとか他の独自のものを持ってる人と同じぐらいに、(それが自分の作品であると)見て取れるものになっているように。だから、もしもA.Iなんかやっちゃったらそれが最後、キューブリックとの繋がりを絶対に消せなくなってしまう。 *そうですね、スピルバーグでさえあの作品でキューブリックの影から抜け出せてないですよね。 「ちょっと待てよ、このバージョンはキューブリックが作ったであろうものよりも良いだろうか?」って誰一人として言わないような映画を作るのは難しすぎるよ。みんなの頭の中ではいつだってキューブリックならもっと良いものを作っただろう、ってなるからね。そんな余計なストレスはいらないよ。 *『ウィンドウリッカー』のビデオはHIP-HOPのビデオに対するトリビュートだったのでしょうか、それともそれらの陳腐な表現方法に対するパロディーだったのでしょうか。 僕はHIP-HOPのビデオが大好きなんだ。あれは無礼の意味でやったんじゃない。 ああいうビデオを観ながらよく、「こいつらは冗談でやってんのかな?冗談に決まってるよな!」って思ってたんだけど実際彼らはマジでやってるわけで、そのこと自体が(ああいったビデオを)良いものにしてるんだと思う。 『カム・トゥ・ダディ』はイギリスではけっこう夜遅くにMTVで流れてたんだ。で、それ(『カム・トゥ・ダディ』)をプッシュしていつも流してくれてたやつがいて、そいつが"パーティー・ゾーン"っていうその番組のテープを送ってくれたんだ、僕はMTVに加入してなかったから。 ある日それを観たときに、残りは全部HIP-HOPのビデオって状況の中で『カム・トゥ・ダディ』を観て、「馬鹿げてる」って思ったんだ。かなり場違いで、おかしな感じに見えてさ。だからHIP-HOPのビデオの中でもフィットするようなエイフェックスのビデオを作りたかった。それが根本的な理由っていうわけではないけど、かなり関係はしている。リチャードのこの曲は夏っぽくて太陽みたいな感じで、"ファック、L.Aであのスタイルの(ヴィデオ)をやるべきだ。"って思ったんだ。 僕は未だにあれはHIP-HOPのビデオみたいには見えないと思ってる—そう見えるようにやったんだけど失敗したんだ。広角レンズを使ったらすぐにハイプ・ウィリアムズみたいに見えるだろうってわかってたんだけどね。安っぽいHIP-HOPのビデオみたいな感じだよ(笑)。 あのビデオはそんなに気に入ってないんだ、単に僕がちょっと違う分野で仕事をした、みたいになってるから。それでも楽しかったけどね、試しにやってみよう、っていう精神でやっただけのものだったから。僕はHIP-HOPをからかおうと思うには、それのファンすぎるんだよ。 *あなたのビデオに関わった人たちからの反応はありましたか? そんなにない。微妙なんだよ、何かを終えた後の僕は妄想的な考えにとり憑かれてて、人の反応を聞きたくないからさ。それが良かろうと、変だろうと、「クソ、クソ、失敗した」って思うんだ。ディレクターズ・シリーズのDVDの為に、ビデオをまとめなくちゃならなかったときは、自分が手放したものを観なくちゃならないから苦痛だったよ。 *あなたは20本ほどのビデオを作ってますが、DVDには10本ぐらいしか収録されていませんよね。どうしてもっと入れなかったんですか? (残りのものは)完全にクソだからだよ。入れるに値するものだけを入れたんだ。でも馬鹿みたいに少ないDVDを作らないためには、いくつか嫌いなビデオも入れなくちゃならなかった。この年になったら隠せるものなんて何もないってわかっていても、これは自分のDVDだから自分が畏縮したりしないようなものを出したい、って思ってて。 自分のやったことはインターネットに流れてしまう。だけどDVDには入れたくなかったんだ。同じ立場にいる人のほとんどは同じように感じると思うよ。アルバムを作るなら、ベストな曲だけを入れたい、とかさ。(DVDに入れなかった)他のビデオはカットした場面とか実験(で作ったもの)みたいなものなんだ。 *そのシリーズへの参加を頼まれたときはどう思いましたか? 最初はどうかなって感じだった。Warpも同じようなものを出そうとしてたから。大体僕はメインストリームから独立したところで仕事をしたいと思ってるし。(それなのに)やりたいと思ったのは、A)依頼があったとき本当に嬉しかったから、B)(スパイク, ミシェルと自分は)充分に違うタイプでアイディアとして成立するから。根本的には嬉しかったからだよ。 *マドンナの『フローズン』のビデオは困難な撮影であったことで有名ですが、それが、マドンナのメインストリーム的な本質というのも相まって、一般的なビデオ作りが嫌いになった原因なんでしょうか。 うん。マドンナのビデオはもう繰り返したくない経験だった。そんなに言うほど悪くはなかったんだ。他の多くの人たちと比べたら、かなり尊重と自由を与えられてたから、僕が感傷的になりすぎてるんだと思う。だけど、僕の基準からすると足りなかった。もしも自分が全部ボツにしてまた撮影するって決めたとして、そうすることができるべきなんだ。だけど、あれだけの資金とあれだけのビッグ・アーティストの仕事がかかっている、っていうこととなるとそれは僕にとっては好まざるストレスなんだ。 *その頃、あなたが断った中には相当数の大物バンドがいたんですか? かなりね。いろんなのが。変わったオファーがたくさんあったよ。自慢してるみたいに思われたくないし、誰かをディスってるとも思われたくないんだけど。"そうさ、俺はあいつら(のオファー)を断ったんだ!"みたいにさ。 *あなたがレディオヘッドのビデオをやっていないことはとても驚きだと思います。あなたのスタイルと彼らの音楽は凄くうまくいくと思うんですが。 単にファンじゃないんだ。それまで聴いたことがなくて、最近OKコンピューターを買ったんだけど素晴らしかったよ。一曲、"ファック、この曲のビデオは作りたかった"って曲があった。 *どの曲ですか? 『サブタレニアン・ホームシック・エイリアン』。その頃(OKコンピューターが出た頃)僕はエイフェックス、スクエアプッシャーとかボーズ・オブ・カナダにはまってたからね、意識が全然違う場所にいたんだ。 *それは皮肉ですね、OKコンピューターの後、彼らは曲にエイフェックスのような要素を組み込もうとしたんですから。Kid Aは聴きましたか? いや、はんぱに聴いたけど。僕の好みじゃないってわかる程度には聴いたよ。彼らはファッキン素晴らしいと思うよ、ただ僕の趣味じゃないだけ。ギター・ミュージックは大好きだよ、正直どちらかと言うと自分はロック寄りだと思うし。本当にビデオを作りたいと思ってたバンドはペイヴメントだ。スティーヴン・マルクマスにも会って、何かをやろうって話にはなってたんだけど実現しなかった。彼らの最後のアルバムからの何かになるはずだったんだ。 *他にビデオを作りたいバンドはいますか? もう既にいないバンドだったらいるよ、ニルヴァーナとか。彼らの(ビデオ)だったら、割れたガラスの上を這ってでもやっただろうね。あとはオーディオスレイヴのビデオもやりかけてた。彼らの曲で一曲特に好きだったのがあったんだ、"コーチス"っていうやつ。 *ああ、結局マーク・ロマネクがビデオをやりましたね。 そうそう。それをやるってことで同意したんだけど、彼らは僕がやらないつもりだと思ってマークにその仕事をあげちゃったんだ。パフォーマンス・ビデオがかなり作りたかったんだ、初期の頃ほんとうに酷いパフォーマンス・ビデオをいっぱい作ってたから。やり直して良いやつを作りたかった。けっこうラフなロック・ソングで割と気に入ってたんだけどな。 僕はトム・モレロの大ファンなんだ、彼は神様だよ。…ストライプスの新しいアルバムにも本当にやりたいと思う曲があったよ。『インスティンクト・ブルース』っていうやつ。 *ああ、私も彼らのブルージーなジャムは大好きですよ。エレファントの『ボール・アンド・ビスケット』みたいな。 おもしろいね、だってその曲はまさに僕が前のアルバムからビデオを作りたいと思ってた曲なんだよ。その2曲がストライプスの曲の中で僕のお気に入りなんだ。ミシェルの『ハーデスト・ボタン・トゥ・ボタン』も大好きだよ。僕があれを作ってたならなぁと思うよ。 *ストライプスのための(作品の)テーマは考えたりしましたか? いや、今やってる他のことのほうに夢中になってるから、(ストライプスのビデオを作るということは)ただの空想だよ。 *しばらくの間、あまり多くのミュージックビデオを作ってませんが、何がそんなにペースを落とさせたんでしょうか。 2つの長編映画のプロジェクトをやってたんだ、後に断念したんだけど。それで3年経ってしまった。それからもう1年はラバージョニーをやってた。そのときはスクエアプッシャーとの長編ビデオもやってたんだ、まだ終わってないんだけど。あと、音楽も作ってた—音楽とかデジタル編集の新しい技術を勉強したり、あとは全体的に自分の技術を磨いてた。いつも、サバティカルとか何とかそういう期間を持とうとしてるんだ—とりあえず2、3年消えて、それから突然戻ってきて超生産的な期間に入る、っていう。実はまたそうなりそうな気がしてるんだ。長編映画とかそういう新しいことをいっぱいする期間になるような。また忙しくなるよ。 *長い期間、それらの映画の仕事にとりかかっていたのに何も発表するに至らなかったことには、フラストレーションを感じませんでしたか? うん、うんざりだよ。そのときはそうでもなかったんだけど、今振り返ると、"ファック、あの時間を無駄にしてなかったらな"って思うよ。でもどうしようもないことだよ、何かに取り組んでるときは熱意で進んでいってる、だからエネルギーが無くなったときにそれを続ける意味なんてないからね。 *ショート・フィルムから長編映画に順応していくことに問題が生じていたりしますか? それを理解できるぐらいには賢明だと思うよ。ビデオをやってたときも直感的に、より大胆な手法を用いることで、5分の間にインプレッションを形成できる、そしてよりに先端的になるってことを理解していたから。コミックのアーティストと同じようなものだと思う、つまり、リアリティを表現手段として用いるわけじゃない、もっとファンタジーみたいな感じなんだ。それとは逆に、長編映画では腰を据えて、自分のスキルを適応させなくちゃならない。画を音に合わせて編集するというのは一つのスキルだけど、それは長編映画では役に立たない。ストーリーとパフォーマンスというものに取り組んでるんだからね。今は自分のテクニカルな能力を全く違うパラメーターに応用させなくちゃならない。それが、僕が映画を作っていない一つの理由なんだ、つまり、まだ自分が興味のあること全部に関連するような、そして、一時間半もちそうなぐらいの強さを持った脚本に出会えていないんだ。くだらないアブストラクト・フィルムとか映像的なものを作るのは簡単だよ。でも僕はストーリーというものが本当に好きなんだ。 *進行中の長編映画のアイディアはあるんですか? うん、いくつか進行してるプロジェクトはあるんだけど、でも黙っておくよ。今まで、結局作らなかった映画についてしゃべりまくっちゃってたからね。馬鹿みたいだし、"いいから映画を作れよ、黙ってろよ!喋ってないで作れ!"って思うだろ。性懲りもなく、"ああ、映画を作ろうと思ってるんだ。"なんて言い張ったって厄介者みたいになっちゃうからね。 *どんなタイプの映画を作りたいと思いますか? ある意味では、徹底的なアクション映画を作りたいと思ってる。長くそれをやりたいってわけじゃないと思うけど、やってみたいんだよね。技術的には簡単に出来ることはわかってるし、車とかそういうのをぶっ飛ばすのはかなり楽しいだろうから(笑)。ああいうのが楽しいだろうってのは間違いないね。でも絶対に、いくつか自分の個性が出てるような映画を撮ってからじゃないとやりたくないけどね。 *あなたのスタイルを盗む監督たちについてはどう思いますか? そういうことを喜ばしく思うべきだ、って言う人がいるけど、絶対にそうは思わない。いつもうんざりしてるよ。何がムカつくって、(パクる方には)大体オーディエンスがたくさんいるってことで、その人たちに僕のほうがそいつらをコピーしたと思われたくないんだ—人が僕のところへ来て、「ビョークのビデオのロボットは、『アイ・ロボット』のパクリだろ」って言ったりしてほしくないんだよ。一番大きな問題は、自分が何かをやってみんながそれを真似したとすると、その年はそういう(視覚的な)型で知られるようになる、そうすると人々はそれに嫌気がさしてくる、そして自分もそういったものとひとまとめにされちゃうってことだ。 一時期、あまりにも多くのモノが自分のと似てるってのにうんざりしてしまって、それが数年間何もしないでいた理由の一つだった。全てのものが自分がやったものと同じように見えて、自分のスタイルが至る所にあるっていう状況で自信喪失になってかなり落ち込んでたから。 初めて作ったビデオが生まれて初めて作った映画だったんだけど、学習を公開の場でやるのはつらいことだよ。僕は学生の自主制作映画とかそういうのも作ったことがなかったから、初めてビデオを作った年がそうだったんだ。あれらのビデオを消去できるなら何だってする、だけどそれができない。これは僕が20世紀にいた人たちの羨ましいところなんだけど、彼らは初期の作品を破壊して、(作品が)良い感じになったらそれが(キャリアの)0年かのようにできるからね。でも今は、ゴミみたいなのを作ったらそれは全部インターネット上にのせられる(笑)。何かそいつらの過去のことも蒸し返して、(自分の過去の作品を)取り返せたらいいと思うんだけど。 いつも、ニュートラルな作品を作る方法を模索してるんだ。それがスパイクやミシェルの好きなところなんだけど、彼らは凄くニュートラルで文体論的だ。だから彼らを模倣するのは凄く難しいんだけど、僕のは凄く視覚的だからもっと簡単にコピーできちゃうんだ。 *ええ、ミシェルの場合、アイディアはシンプルそうに見えるけど、いつも素晴らしく無邪気というか…。 まったく同感だよ。電車の窓の外のビデオ(スター・ギター)を見たとき、「何であれを考えつかなかったんだ」って思ったよ。だって僕がいつもアイディアを思いつくときは電車で窓の外を見てるときなんだよ。あれは見事だね。 *それでは、今後の予定を聞かせてもらえますか? 2つの長篇プロジェクトをやってる、自分の音楽と映画だ。来年発表になるよ。 *CD/DVDという形になるんでしょうか? うん、ラバージョニーは棚の中を片付けたって感じだった。今やってることは本当に、ああいったビデオとかとは完全に違うステップなんだ。別の段階へ進んだんだよ。新しいものを発表したくてたまらないよ。物事を今までよりももっと先へと進められるようになったんだ。アイディアが涌いてきたらそれを(自分の)音楽へと組み込むことができるようになったからね。他の人の為にビデオを作ってたときは、制限されてたんだ。 *あなたの音楽を説明するとどうなりますか? (笑)、わからないよ。 *インストゥルメンタルですか? いや。ただ僕(の音楽)なんだよ。基本的に、(合うような)音楽が送られてこない、そういうビデオのアイディアが凄くたくさんあったから、自分で曲を作ることにしたんだよ。多くの人は、論理的なステップは映像を後から作ることだって言うだろうけど、僕にはそれよりも良いアイディアがあると思ったんだ。ビデオを作りながら音楽も作っていくっていうね。 *では、基本的には全ての曲にビデオがついてるアルバムになるんでしょうか。 多分ね、もしくはビデオのついたEPとか。まだ取りかかってるところだからはっきりしないけど。完全にラジカルな方向でやってるんだよ、長編映画よりももっとエキサイティングだ。(長編映画は)新しくないからね。今までやったことのないことに挑戦したいんだ—だからうまくいくかどうかわからないし。 *ということは、音楽やレコーディングの技術をたくさん勉強してたんですね。 うん、この5年間ビデオを作ってる間に音楽のこともたくさん勉強して、それで自分自身で音楽を作ることが出来るって気がついたんだ。自分自身の映画のために音楽を作ってるとは言え、新しく取得したスキルは役立たせたい。 * 何か、あなたの音楽にたとえられるようなものはないですか? (自分が音楽をやるという話を)関心を示さずに聞いておいたほうが楽しいと思うよ(笑)。でも、ストライプスが今僕が唯一好きなバンドだよ。彼らが唯一、エキサイティングだと思えるバンドだ。最初は好きじゃなかったんだけど、段々好きになっていったんだ。ジャック・ホワイトはファッキン素晴らしいと思うよ。 [ Chris Cunningham Pitchfork Interview by Ryan Dombal ]
by cecoc
| 2006-05-30 23:11
| インタビュー和訳
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